「データサイエンティストとして就活する上で資格は必要ですか?」
「統計検定やプログラミング系の資格は新卒就活で記入する欄はありますか?」
そういった質問をよく受けるのでお答えします。
資格はなくてもいい
結論として資格はなくても大丈夫です。
ここでなくても大丈夫という言い方をしたのは資格があると最低限の証明にはなるがそれは必要でも十分ではないという意味です。
以下で理由を説明します。
理由1:過去の実績
まず過去の就活生の事実ベースで話をします。難関と言われるデータサイエンス系の企業に内定した人でも資格を持っている人もいれば持っていない人もいます。そして通過率は資格によって大きく変わることはありませんでした。ここからも資格による優遇が大きく働いているとは考えにくいです。
理由2:人事の話
次にデータサイエンス系の会社で人事をやっている知り合いから聞いた話ベースで話をします。近くについては持っているに越したことはないがそれで採用がどうこう決まる話ではないと言っていました。
選考フローの中で書類の時点で落とすかどうかには若干使われるようです。例えば文系の学部卒で書類の中でプログラミング言語経験がなし資格もなしという状態ですと、他の理系大学院卒の人の方が優先して通ることは感覚的にもわかるでしょう。このように書類時点で明らかにスキルがないから弾くというのを避けるためには資格の取得は有効かもしれません。しかしこの目的で資格を取得するなら後述するkaggleの方が費用対効果が高いので、わざわざ資格の方面をやる必要はあまりありません。
しいて言うなら統計検定の2級を持っていると最低限の証明にはなるので文系の人は持つと役立つかもしれない程度です。長期のインターンシップ経験がある人はこの辺はどちらでもいいです。また、統計検定という話だと、準一級くらいは持っているのが望ましいです。例えば滋賀大学のデータサイエンス研究科でも、統計検定の準一級を持っていることは事実上入学に必須になっています。世間的にも、統計検定を持っているDS就活生は増加しています。ここから、データサイエンス選考のベースラインとしてこのくらいの水準が就活にも求められるようになるのではと予想しています。「証明」として使うのなら、現在の就活市場の基準値を把握して、自分の能力の不足している分野で資格取得を取る場合は、有効です。
理系の大学院生についてはそもそも大学院の入試時点で統計検定2級ぐらいの試験は受けているはずですし面接官もそんなことは分かっているので資格を取るための努力はコスパ悪いです。証明は一つで十分です。
就活ではどのような問われ方をするのか
実際の就活でどのように資格が問われるのかをイメージつかない人も多いと思うので軽く説明します。エントリーシートを提出する際に保有資格を書く欄がある企業が多いです。そこにデータサイエンス系の資格を書いたりTOEICの点数を書いたりします。
ちなみにそのほかには、使えるプログラミング言語や、kaggleやAtCoderの成績を書く欄もあります。(こちらは任意記入がほとんどです)
なので保有している資格については一応企業側に伝わるという考えをした方がいいでしょう。この記入欄があることから資格が重要視されているのではないかという仮説を持つ人が例年多いです。(実際は大きく選考に影響は与えていません)
また面接内でも聞かれることはあります。事務的に必ず保有資格を聞かれるということはあまりなく、会話の流れで資格の有無について聞かれることはあります。ただ理系の方はあまり聞かれることはない印象です。
文系の方が最低限のスキルを持っているかの確認として聞いてくる人がいるくらいです。
資格よりも有効な技術力の証明方法
kaggle
資格を取るよりもkaggleをやった方が圧倒的に効率がいいです。というのもデータサイエンス業務への親和性が高いからです。また客観的な指標として結果が出るのも良いところです。資格試験の良いところは客観的に成果がわかることですがkaggleは個人的にはその上位互換になると思っています。
データサイエンスをやっている人ならほとんど知らない人はいないので、少なくとも業界内では国家資格くらいの力を持ちます。
データサイエンス系で今日本に存在する資格はどうしても実務というよりは机の上のお勉強という感じがします。一方でkaggleの場合は実務で使うようなデータを扱うことになるので仕事での成果に直結するという考えの人が多いです。
長期インターン
長期でのインターンシップ参加は他の何よりも強いかもしれません。実務で成果を出したということが仕事能力の直接的な証明になるからです。実際メガベンチャーなどにデータサイエンティスト職として採用される人はインターンシップで何かしらの成果を出している人が多いです。
例えばビジネス上の課題に気づいてやり方を提案して実際に実装まで進めたような人はデータサイエンティストの間で人気の高いメガベンチャーに就職していました。ここまで一気通貫でやることができなくても分析業務において自分の研究を生かして高い技術力を見せた場合など、強みの生かし方次第で色々なやり方はあります。
どちらにせよ長期のインターンシップに参加しないと始まらないので、まだインターンシップを経験していないという就活生は参加できるところを探してみましょう。まだある程度の時間が残っているのならインターンシップは絶対に参加するべきです。
研究実績
理系の大学院生の場合は研究実績を必ず聞かれます。ここで成果を出しているのかどうかはとても大事になってきます。当たり前のことですが就活と並行して研究もちゃんと頑張りましょう。また大事なのは研究を頑張ることそれ自体だけではなく研究をうまく伝える技術も身につけることです。これは技術面接という先行フローにおいて生きてきます。技術面接については別の記事で解説しているのでよかったらそちらを見てみてください。
このように資格よりも有効な自分の実力の証明方法がたくさんあるので無理して資格を取る必要はありません。
「資格信者」になってはいけない
資格試験を取得するということは日本では大きな権威性になっています。また結果が出るまでの過程が明確であり他の人からも認められやすいため資格試験を獲得するために全力を費やしてしまう人をよく見ます。
しかしあくまで就活をゴールとするのであれば資格試験の取得はゴールではなく手段に過ぎません。資格という明快な目標に向かって頑張ることはやりがいもあることですが、実際に就活で評価されるのは長期のインターンシップで泥臭く結果を出した方です。
世の中には資格試験の取得をおすすめするような人が多くいますがデータサイエンティストという観点からすると入社後に活躍するのも学生時代から長期のインターンシップなどで実務的なデータに触れてやってきた人です。
机の上のお勉強ももちろん大事ですが早めに実践的な現場に行くことをおすすめします。