大手企業のデータサイエンティストはやめとけと言われる理由【ベンチャーやコンサルとの違い】

「第一志望は大手企業」

「中小企業よりも大手企業の方が社会的に大きなインパクトを生み出して活躍できそう」

「ベンチャー企業と大手企業どっち側に行くべき?」

そう思っている方に読んで欲しい記事です。

データサイエンティストという職種にとって大手企業はメリットもありデメリットもあります。そこで今回はデータサイエンティスト新卒就活ならではの企業選びの注意点を説明します。

著者は大手企業を2社経験し、両方ともデータサイエンティストをしていました。入ってからしかわからない良さも悪さも経験しています。

今大手企業を第一志望にしている方には読んでほしい記事です。なお一般的な大企業のメリットデメリットではなくあくまでデータサイエンティスト観点に特化しています。大手の特徴として、福利厚生があることや取引先からの信頼があることは知っている前提とします。

大手企業のデータサイエンティストのメリット

まず大手企業のデータサイエンティストのメリットを説明します。

豊富なデータ

大手は事業が大きいので豊富なデータを扱うことができます。過去の蓄積や現在幅広く展開する事業からデータを取ることでビッグデータの分析が可能なことが多いです。社会的に広く知られているサービスの中身のデータを見ることができるのでそこにも面白さを感じる人が多いです。世の中の大きな流れが見えるので知的好奇心の強い人は満たされます。

長期での利益を見据えた分析ができる

データサイエンティスト事業は会社にとって長期スパンで利益を生むものです。また不確実性の高いものであり余裕のある企業でないと十分そこに投資ができません。というのも簡単な分析であれば短期のスパンで行い確実に成果を出すことも可能ですが、ほとんどのデータサイエンスのプロジェクトは「ここをこうしたら事業が良くなるのでは」という仮設ベースでスタートすることが多く、そのためそこにコストをかけることに上からの承認がおりにくいこともあるからです。

この傾向は営業系でガンガン稼いだ中小企業で一番顕著です。机の上での長期スパンを見据えた人材の稼働確保はは企業にとって単純に赤字になるリスクがあるのです。大手企業においてはそこまで余裕を見た上で仕事を任せてくれるので深く分析をすることに寛容です。

勉強熱心な人が多いので基準値が高い

大手企業は一定のハードルを乗り越えた人しか入社できないので仕事のどんなタイミングにおいても常識のレベルが高いです。知的好奇心も強い人が多くデータサイエンスのような学問的な職種についてはこれがダイレクトに効いてきます。例えばトレンドの概念について会議内で出てきた時にみんながそれを知っていて共通の認識になるかどうかといった小さいところでも仕事をする上でのストレスに大きく影響します。

ベンチャー企業だと小さい頃からそこまで勉強が好きではなかったような人もデータサイエンスの部署を希望して混ざっていたりするので頭の良さが玉石混合という企業も実はあります。もちろんデータサイエンスの少数精鋭集団のような場所だと違いますが、そこら辺のベンチャー企業においては勉強のレベルが違うような人も混じってきてしまうことも留意しましょう。

大手企業は学歴フィルターを設けているところも多く一定以上会社のメンバーが勉強ができることが保証されているのが良い点です。データサイエンティストは勉強が必須なのでここでの基準値の違いは後々のキャリアにおける価値観を決める上で地味に効いてきます。

研修や外部講座に無料でたくさん参加できる

大手企業は会社経由で参加できる研修などはとても充実しています。外部の専門性を高めるための講座にも参加できます。通常は何十万円かかかるようなデータサイエンスの講座でも無料で参加できるのは嬉しいポイントです。資格試験を受けようとすると通常はお金がかかりますが会社によっては資格試験手当のようなものがあり合格するとお金がもらえることもあります。会社の業務における成長スピードはバリバリのベンチャーに比べると緩やかになるかもしれませんがこういった机上の勉強における成長のサポートは見逃せません。テストは学問的な仕事である以上こういった研修への会社からの投資はベンチャー企業にはないメリットなのです。そして転職の時にこういった講座を受講したり資格を取得している経験は実績としてちゃんと示せるので効いてきます。

大手企業のデータサイエンティストのデメリット

反対に大手企業のデータサイエンティストにはデメリットももちろんあります。

技術に理解のないおじさんが多い

実際に働いていて一番つらかったのはこれかもしれません。大手企業に就職した若手社員の、飲み会での愚痴ナンバーワンです。データサイエンスは技術の中でも比較的新しい分野です。それを理解しているおじさん世代の人はほぼ皆無です。そもそも数学なんて彼らにとっては数十年も前に大学や高校でやったものであり、学習指導要領も今とは全然違います。記憶のかなたに忘れ去られている数学などを使って会社内においておじさんを説得するのは容易なことではありません。しかし会社の中で権力を持っているのもまた彼らなのです。なので向こうにとっては理解ができない数学やプログラミングという技術の概念を用いずに、この技術でどれだけ彼らにメリットをもたらせるかということを説明する必要があります。ここで要求される能力は大学生の間に想像していた技術バリバリのデータサイエンティストが持ち合わせる能力とは全く異なるものです。しかし技術畑の人間でもそういった社内調整が上手い人間から出世していきます。若い社員が多いベンチャー企業や、最新技術にキャッチアップできないとまともな地位が得られないコンサルではこういったことはないのですが、村社会である大手企業ではいまだに技術自体の社内的な地位は低いです。

必要なデータが集まらない

上記にも関連しますが必要なデータが集まらなくて分析作業が止まってしまうことも多いです。データサイエンティストで分析を行う上でデータの量はとても大事です。しかし大手企業においては部署間の壁がとても厚いのです。同じ会社だからみんな仲良しこよしというわけではないのです。むしろ社内で対立関係にあるような人たちもたくさんいます。当然敵ですからデータはくれません。大学生の立場だとここまではイメージしにくいかもしれません。しかし間違いなく大手企業であればあるほど社内政治は色濃く、それは技術よりも優先順位が高いです。

必要なデータを集めようとすることがそもそも難しいのでなかなか分析に着手できません。どんなに高度な技術を持っていたとしてもここのタイミングでつまずく人が非常に多いのです。

また実際にデータが集まったとしてもその形式が汚いことがよくあります。データのまとめ方が各部署によって全然違うため綺麗にまとめ直すだけでデータ分析プロジェクトの8割ぐらいの稼働を使ってしまうこともあります。それくらい大手企業においてきれいなデータを集めることは難しいのです。データの量が多いからと言ってそれをすぐに誰でも分析できるかどうかというのは全く別問題なのです。

仕事への熱意の低い人も多い

大手企業は安定していますがこれにも光と闇があります。安定という光と引き換えに、「どうせ安定しているから頑張って仕事しなくてもいいよね」と思う人たちの存在があります。モチベーションの高い20代においてこういった人が周りにいることの悪影響は大きいです。自分はグイグイ成長したいのにみんな業務時間が短くなってしまっているため十分に働けなかったり、消化不良のまま仕事が終わってしまうこともあります。

会社によっては残業時間について厳しく人事から管理されているため、一定時間の残業をしているとストップがかかります。データをよく見て色々な手法を試してみたいところですが時間に限りがあるため自分の技術力を十分に生かしきれないなんてことは日常茶飯事です。

業務のスピード感が遅い

業務のスピード感はベンチャー企業と比べて間違いなく遅いです。ベンチャー企業なら1週間で終わることに3ヶ月以上かかることは珍しくありません。これは大手企業だとステークホルダーがとても多くなるためです。例えば自分はデータ分析系の部署にいるにしてもシステムやセキュリティ、営業側に確認を取らないと進まないことは多いです。

新しいことを試す前に「法律として大丈夫なのか法務部へ必ず確認を挟む」「セキュリティ的に改善案はないかセキュリティ部署に確認を挟む」こういった会議が組まれます。その会議に向けて資料を準備したり自分の部署内でも上司への確認を挟んだりと、動きの遅さはベンチャー企業の社員が聞いたら泡吹いて倒れます。

そのくらい業務のスピード感は遅いです。

給料の上がり幅が小さい

大手企業は給料が高いと思っている人は親世代に特に多いです。しかし現実の値を見てみると中小企業と変わらない、もしくは一部のベンチャー企業よりも低いといった事態が起きています。これはデータサイエンティストなどの専門性の高い仕事において特に顕著です。

データサイエンティストを雇用しようとしているベンチャー企業は、技術力に強みを持っているところも多いため若手であっても十分な実力がある人には相応の対価を払います。なので若くしてたくさん稼ぐ人も多いです。

しかし大手企業は一昔前のジェネラリスト的な志向がいまだに根強く残っています。世間へのアピールとして先進的な取り組みをしている風の会社もありますが、実際内側から見ると全然何も変わっていなかったということも多かったです。世間的には新しいことをしていると言われる会社に在籍していましたが外からのイメージと中からのイメージは全然違いました。

専門性のない人であれば確かに大手企業の年功序列で給料が上がっていくのを待った方がいいパターンもあります。しかし専門性のあるデータサイエンティストという職業においては大手企業の比較対象が技術ゴリゴリのベンチャー企業になったりするので大学院時代の同級生と給料の話をした時にあまりに自分が低くて驚くということがあるあるです。

コーディングは子会社などに外注して自分はPMのみやる部署が多い

データサイエンティストになりたい就活生は自分でゴリゴリのコーディングをしたい人も多いかもしれません。しかし大手企業に行くとその瞬間その夢は実現しません。特にシステム系の子会社を持つ会社においてはコーディングは子会社に外注して自分はPMのみにやるところがとても多いのです。つまり実際にやる仕事は社内調整が大半を占めます。手を動かして技術力を身につけたい人にとってこういった環境は満足度は低いでしょう。

外側に向けてのブランディングとしては技術力がとてもあると言われている会社であってもこれは例外ではありません。ゴリゴリの行動を書きたい人は内製化して全て行っているような会社などに就職する方が幸福度が高いです。

最新技術は理解はされるが実装しようとすると社内決済を通らない

前例のないことは通りません。担当者がどんなに最新技術を理解してその方が成果が出ることを分かっていたとしても、いざ実装しようとすると社内決済を通らないことも多いです。理由は前例がないからです。大企業の論理については大学生のうちは想像しにくいかもしれませんが大手企業においては前例の存在がかなり大きなパワーを持ちます。まず前提として大手企業では責任のなすりつけ合いが起こっています。これはミスをしないことが出世にインパクトを持つからです。減点法での評価も多いためみんなミスを恐れるのです。もし万が一ミスをしたとしても他の人のせいにしないといけないわけですが、この時に便利なのが前例の存在です。「前にこのやり方でうまくいっていた前例があった」こういった理由をもしミスした場合にも話すことができたとしたら、根拠を持って行った行動として認められます。しかし自分の独断と偏見で行ったことであればそれは紛れもなくその人のせいなので評価に響きます。すると会社内はどんな人が多くなるでしょう。そうです前例のないことはしないという文化が出来上がります。みんな自分のせいにされたくないのです。故に最新技術への理解はされることは多いのですが実際に社内決済を通ることはあまりないのです。

企業の選び方の着眼点

大手企業のデメリットを聞いて大手企業への就職が嫌になった人も多いのではないでしょうか。しかしもちろん大手企業のメリットで語ったようにたくさんのメリットは存在します。なるべく良い大手企業を選ぶために、どのような判断軸があればいいのでしょうか。データサイエンティストとしての大手企業の選び方について解説します。

データサイエンス部署の新しさ

データサイエンスの部署がいつ立ち上がったのか調べましょう。立ち上がってから年数が経っている方がいいです。なぜならその分会社内における体制が整っているからです。一般的にデータサイエンスの部署が立ち上がってから数年間はデータを得るための仕組み作りにほとんど注力することになります。社内にデータサイエンスを浸透させるための取り組みです。本格的な分析ができるフェーズはその後になります。なのでもしデータサイエンス部署ができたての会社に進んでしまうとデータエンジニア的な仕事や会社内に向けたルール作りといったあまり面白いデータサイエンスとは言えない仕事が多くなります。データサイエンスの部署はどんなに古くても20年前とかにできている会社はそんなにないと思うので、部署が古すぎるという不安は不要です。歴史のあるデータサイエンス部署を選びましょう。その方が同じ部署内にベンチマークとできる人材も多く自身の成長にもつながります。

すでにデータサイエンスで何か実績があること

大企業においては先ほども説明したように前例の存在が大きな力を持ちます。なので会社内にデータサイエンスを用いて実績を出した前例が多ければ多いほど会社内での立ち振る舞いをしやすくなります。データサイエンスを用いたプロジェクトで会社内にどんな成功事例があるのかを聞いておきましょう。それによって自分の社内調整の難易度が変わってくるのです。

データサイエンスを外注する先の子会社があるかどうか

自分でコーディングをできない会社の特徴として子会社に全部外注するというのがあります。もし自分でコーディングをしたい場合は外注先を使っていないことを確認しましょう。コーディングの内製化が行われているところであれば大手企業であってもきちんと自分でコードを書くことができます。また外注先の技術レベルにもよらずに自分で使う技術レベルをコントロールしやすいのも特徴です。子会社の技術レベルが自分の要求水準に達していなくてアイデアの実装ができないこともあるからです。

「使える」データの量

大事なのは存在するデータの量のみでなく使えるデータの量です。過去のプロジェクトにおいてどの程度の量のデータをどこから集めて使ったのか聞いておきましょう。自由に社内で共有されているデータはどの程度あるのか、事業の中でどこの範囲までデータ分析に使っていいのか、そういった基準は会社によって大きく異なります。例えば法律的に個別のデータの紐付けがあまり許されていなくて持っているデータを十分に分析できないこともあります。セキュリティ的に閲覧しにくいデータもあります。面白そうなデータをいくら持っていても分析に使うことができれば宝の持ち腐れです。大手企業は法律やセキュリティといった守備にめちゃくちゃ時間を使うので、「面白いデータを持っていそう」というだけではなく実際にそれが使えるのかどうかを確認しましょう。

社員のデータリテラシーレベル

会社内にデータサイエンスをどれだけ理解している人がいるかも大事です。社員のデータリテラシーレベルを決める要素はいろいろあります。例えば文系と理系の比率や年齢層、大学院卒業者の割合などです。事業における優先度の高い課題がデータサイエンスを使って解決する必要のあるものなのかなど、会社単位の事業によっても変わってきます。とはいえ大企業はベンチャー企業や専門家の企業に比べて社員のデータリテラシーレベルは低い傾向にはあります。この点を理解した上で最低限理系の多い部署であることや、おじさん社員も情報系のバックグラウンドがありそうなことを確認できると良いでしょう。

データサイエンスの部署「以外の」人にデータサイエンスについて聞いた時の感想やイメージ

データサイエンティストとしての就活をしていると見落としがちなのですが、データサイエンス部署はあくまで会社の中の1組織です。そしてその社内的な立場は会社によって大きく違います。一般的に大手企業では営業職が出世コースです。人事系が出世コースという会社もあります。少なくともデータサイエンスの部署は全社的には出世コースでないことも多いです。そのため言い方は悪いのですが社内的に「見下されている」パターンも一定数存在します。もちろん表面上ではリスペクトしている風のことを言いますが、実際のところは「机上の空論を語るオタク」ぐらいに思われている会社もあります。これとは逆に「専門性があってすごい」というリスペクトを持たれている会社もあり、企業ごとに部署ごとのイメージがあるのです。

これは就活生のあなたが、例えば外資系のコンサルに「かっこいい」というイメージを持ったり、ゴリゴリ営業系のベンチャーに「体育会系」というイメージを持つのと同じようなものです。会社の中においても部署ごとにそういった社内的なイメージがあり、入社後のセルフイメージや自尊心に関わってきます。出世頭の人はやはり楽しそうに仕事をしていますし、社内的に地位の低い部署にいる人はだんだん自信をなくしてきてしまいます。全社的にデータサイエンスへのリスペクトがある会社を選ぶことは会社員人生を楽しく生きる上で大事です。

特にデータサイエンスは新しい分野のため会社によって扱われ方が大きく変わってきます。データサイエンスが社内的に重要視されているところの方が仕事もしやすいので、志望順位の高い会社においてはデータサイエンティスト以外の総合職の人に話を聞く機会を設けてみると多面的な理解が深まるでしょう。

大手はよく選ぼう

この記事では大手企業のメリットとデメリットを紹介してきました。

大手企業をとりあえず目指してみようと思う人は多いのですが、就活生にあまり知られていないメリットやデメリットが多くあります。きちんと入社前に見極めれば後悔は少なくて済むので、企業研究を行っていきましょう。

またデータサイエンティストの新卒就活専門講座「Optima」では大手企業のデータサイエンティストに本音の話を聞く機会を設けたり、データサイエンティストの観点からおすすめの企業リストを共有しています。もっと情報収集をしたい人は検討してみてください。

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