「データサイエンティストの年収のリアルを知りたい」
「実際何歳でいくらくらい稼げるの?」
そんな質問をよくいただくのでこの記事で答えます。
データサイエンティストの年収に関するネット上での意見
データサイエンティストについてネット上で調べると年収がとても高いという意見をよく見かけます。しかし実際にデータサイエンティストとして働いてみるとそれほど年収が高いわけではないことがわかります。
データサイエンティストになれれば高収入になれると思い込んで目指したものの実際のところの収入は大したことがなかったという後悔をする人がよくいるので、この記事はそういった勘違いを正したいという思いで執筆をしています。
原因は平均年収のからくり
どうしてデータサイエンティストの平均年収は高いと噂されるようになったのでしょうか。情報ソースにもよりますが見る限りではデータサイエンティスト職についている人の平均年収を挙げている人が多いかと思います。
データサイエンティスト職についている人の平均年収は高いのでデータサイエンティストになれば高収入が手に入るという主張のものです。
確かに職種別で見た時にデータサイエンティストの平均年収は高くなっています。しかしここにはからくりがあります。データサイエンティストになろうと思う人はそもそも高学歴や理系の人が多いです。こういった人は就活市場でとても人気があるため有名企業など高収入の会社に入りがちです。つまりデータサイエンティストを目指すような人の母集団自体が一般的な就活の母集団とは全く異なるものなのです。
就活生全体を母集団としてみたときとこういった優秀層のみを母集団として見た時で平均年収が違ってくるのは当然のことではないでしょうか。またデータサイエンティストを雇うくらいにデータが豊富にあるような企業は大手企業が多いことも事実です。大手企業ではなくても高度な専門的なコンサルティングを行う企業など一般的な就活生では入れない企業が多いです。
つまりデータサイエンティストの平均年収が高いということは、データサイエンティストになれば高収入になれるという因果関係ではなく母集団の違いを表しているのだと私は感じています。
実際のデータサイエンティストの年収
では実際のデータサイエンティストの収入はどのくらいなのでしょうか。結論を言うと他の総合職と変わりはありません。つまり平均年収が600万円の企業に入ったデータサイエンティストの平均年収は600万円ですし平均年収が1000万円の企業に入れば1000万円になります。
これには例外があってデータ分析系の専門企業やメガベンチャーにおいては個人単位の専門性によってジョブ型雇用に近い形で給与が支払われることが多いのでこういった高度の専門性を持つ方はまた別の評価指標になります。
ただ今日本で働いているデータサイエンティストの中で体感で8割以上の方は他の総合職と同じような待遇ではないかと思います。私は大手企業2社でデータサイエンティストをしてきたこととフリーランスとして様々な企業のデータサイエンティスト系の支援をして来たことから、多くの会社を知っていますがデータサイエンティストだけが給与水準において差がつけられている会社はそこまでありません。
これは人事制度設計を考えればわかることですが人気の職種において給与を必要以上に上げる意味はあまりありません。なぜなら会社としては人材が集まりかつ他社へ転職しなければいいわけですから、就活性人気の高いデータサイエンティストという職業をわざわざ高い給料にする必要はないんですね。残酷ですが給与設計というのは会社側の視点に立てばこのように専門性の高度さだけではなく需要と供給の関係によって決定します。
年収を上げるにはどうすればいいのか
では年収を上げるにはどうすればいいのでしょうか。結論、「転職or出世」です。この章では、これをデータサイエンティスト目線でさらに解像度高く理解できるように説明していきます。
社会人としてデータサイエンティストで働いていると年収を上げるキャリア形成にはいくつかのパターンがあります。基本方針としては以下の3つがあります。
・業界を変える(小売業界からコンサル業界など)
・会社を変える(業界3位から業界1位など)
・出世する(これはそのまま会社内でのしあがる)
業界を変える
業界を変える方法は大変ですが大きく年収を変えられる可能性があります。また、一般的な転職活動で業界を変えることは難しいですが、データサイエンティストは専門性があるので他業界でも受け入れられる確率は高いです。その意味で、転職の選択肢を含めて期待できる年収という軸では、一般的な会社員より上です。(ただし個人の能力や人材市場の環境にもよるので、常にアンテナは張っておきましょう)
例えば今小売業界でデータサイエンティストをしている人がコンサルティング業界でデータサイエンティストをすると年収は100万円や下手したら200万円レベルで変わってきます。これは業界ごとに利益率が異なっているので平均給料が変わることから生じる差です。
業界ごとの平均給与は意外と差が開いているので興味がある方は調べてみてください。
ただし業界を変えると扱う製品が変わるのはもちろんのことですが社風や独特の文化が変わったりもするので転職直後はかなり大変な思いをすることになります。可能であれば新卒の時点で平均年収の高い業界に入っておくのをおすすめします。また業界を変えやすい受託系の会社に入るのも手です。例えばデータ分析の専門系企業やコンサルティング会社などに入ると後から業界を変えることは事業会社に比べると容易です。
何をしたいのかまだ定まっていないのでコンサルに行く、という人は近年かなり多い印象です。実際そういう人は、キャリアにおいて30歳前後で後悔している人は少ないです。その後のキャリアとして、自分の望む形でコンサルに残るなり事業会社に行くなりできています。給料が高いという意味でも、コンサルはおすすめの進路です。ただし学歴重視なところも多いので、学歴に自信がない人は自分の学校のOBが在籍していることを必ず確認しましょう。学歴の差を逆転して内定するには入念な計画が必要です。以下の記事も参照してみてください。
会社を変える
会社を変えるという手もあります。同じ業界の中でも会社ごとに平均年収には差があり会社を変えただけで年収が上がるというのはよくある話です。ただし業界内で小さい会社から大きい会社に移るのは簡単なことではありませんしタイミングにも左右されます。
業界内順位の高い会社に転職することは簡単なようで実際は難しいことも多いのです。その点でただ年収を上げたいだけなのであれば業界を変えることをおすすめすることが多いです。
例外的に、新規事業の立ち上げタイミングなどでは大きく採用が動くのでチャンスです。データサイエンス分野は新たに立ち上がったり急拡大することも多いので、各社の情報を常にウォッチしておくといいでしょう。中途でも新卒でも、毎年採用の状況が激しく動くのがデータサイエンティストの人材マーケットの特徴です。新卒就活に比べてコンスタントな採用活動は行われていないところも多いので、「運とタイミング」の要素が強いのが転職活動です。そして、転職活動においてデータサイエンティストという専門性があると運を掴みやすいのは間違いありません。
会社ごとの収入の差については、残業時間や家賃補助など細かいポイントまで含めて、できるだけ現役社員の人に話を聞きましょう。外からではわからないことも多いです。強いていうなら、ネット上ではopenworkの平均年収情報は当てになります。知り合いからの情報は所詮n=1ですが、このサイトでは多くの社員からの口コミをもとにして平均が割り出されています。ただし役職や年次がバラバラなので、注意しましょう。統計リテラシーの高いみなさんなら大丈夫かと思いますが、意外と使い方が難しいサイトでもあります。
会社ごとの情報をしっかりと調べた上でなら、望む年収アップも可能なのが、会社を変えるという選択肢です。
出世する
出世をした人はもちろん年収が上がります。ただ気をつけたいのは出世をすると労働量も上がるので時給換算でむしろ下がる人もたくさんいます。この点についてはなぜ自分が年収を上げたいのかをあらかじめ考えておかないと後で後悔することになるので注意が必要です。
またマネジメントサイドに回ると技術にあまり触れられないこともデータサイエンティストとしては留意しておかなければいけません。技術や数学が好きでデータサイエンティストになった人は一度マネジメント側になってしまうとそういったものに触れられずひたすら社内調整に明け暮れる可能性もあります。年収は高くなってもデータサイエンスができないと嘆いている人は予想以上に多いです。
スペシャリストとしてのキャリアを歩むことができればマネジメントをしなくても収入を上げることはできますがスペシャリストとして出世ができる会社は今の日本ではごくわずかです。もしスペシャリスト路線に行きたいのなら、新卒就活の時点で、そういった出世をしているベンチマークできる先輩が在籍していることを確認しましょう。
新卒就活の時点から自分は将来的にどの程度出世がしたいのか考えておくことで入社後のキャリアパスを描きやすくなるでしょう。
データサイエンティストの年収は意外と低い
データサイエンティストの年収は結局その会社の平均年収程度になることが多いです。もしそれ以上に稼ぎたい場合は業界や会社を変える必要があります。(ただし一般的な会社員に比べて、専門性があるぶん転職活動は有利に進みやすいです)
一部の専門系企業では年収がかなり高いところもあるので専門性の高い人はそういった企業を目指してみても良いでしょう。
また、20代のうちに市場価値を伸ばしておけば、年収の高いポジションにつくことも可能です。成長できる会社の選び方は以下の記事を参照してください。