「新卒でデータサイエンティストとして入社して成長したい」
「市場価値の高いデータサイエンティストになりたい」
そんな方に向けた記事です。
一般的な「成長できる企業の選び方」とデータサイエンティスト就活の違い
世間ではどのような企業が「成長できる」と言われているのでしょうか。試しに、「新卒就活成長できる会社」というワードでググってみたところ、以下のような企業の名前が出てきました。
引用元:https://diamond.jp/articles/-/253849?page=2
このリストを見た時の、データサイエンティストとしての感想を以下で述べます。
「ビジネス力」以外の軸も考慮しないといけない
ご存知の方も多いかと思いますが、データサイエンティストには3つのスキルが必要です。
引用元:https://www.datascientist.or.jp/symp/2021/pdf/20211116_1400-1600_skill.pdf
一般的な就活における「成長できる企業」リストを見た時に感じたのは、ビジネス力以外の「データサイエンス」「データエンジニアリング」の観点が抜けているということです。
データサイエンティストのキャリアにおいては上記の能力のうちどれを伸ばすのかを決めておきそれに適した進路を取ることが必要です。路線によって成長に必要な環境が異なります。
ビジネス力が成長する会社
ビジネス力が成長する企業は一般的に言う成長できる企業と似通っているところがあります。リクルートホールディングスやサイバーエージェントといったメガベンチャー企業や、電通や野村證券などのハードワークな日系大手企業は間違いなく成長できる環境といえるでしょう。
もちろんデータサイエンス的な技術力を身につけることも大事ですが一般的なビジネス力を身につけることもとても大事になります。その意味でこのページの一番最初に出した表も役立ちます。
データサイエンティストの観点から補足するとしたらビジネス力の成長という意味ではコンサルティング企業がおすすめです。表に出ているアクセンチュアは近年データサイエンス系の企業を買収するなどコンサルティング業界の中ではデータサイエンス分野のリーディングカンパニーとも言えます。
コンサルティング業界における序列とデータサイエンティスト観点で見たコンサルティング業界の序列は異なることに注意をしてください。一般的には総合コンサルよりも戦略コンサルを目指す人は多いですが、もちろんデータサイエンスにおいて総合コンサルに行く方が実務的な能力は身につきます。
またBig4やシンクタンクといった分類もありますが、それ以前にデータサイエンスへの力の入れ具合が問題となります。どれだけの人数のデータサイエンティストが在籍してどれだけのスキルを持つのかを入念に調べておかないとコンサルティング業界の中でも自分の望む業務をできないことはよくあります。
ちなみに、「Big4の中ではどこがおすすめですか」という質問をよくいただきますが、正直どこもあまり変わりません。社風が若干違いますが、誤差です。全部受けて、受かったところに行くくらいの気持ちでいいと思います。あとは、データサイエンティストとしての配属先がどの程度自分のやりたい分野と近いのかとか、最近その会社がやっているPJが自分の志向に合うのかといった部分でしょう。ここは数年スパンで採用制度や事業体制が変わるので、最新のところを会社に直接確認してみてください。
データサイエンス力が成長する会社
データサイエンス力や統計力と言われるようないわゆる数学的な分野が上達するのはどこの企業になるでしょうか。結論を言うと「研究室のような雰囲気の会社」が該当します。
エクサウィザーズやブレインパッドをはじめとした技術力に強みを持つ専門企業がこれに当たるでしょう。
ただこういったデータサイエンス力が成長する会社に入社する上で注意しておかなければいけないのは新卒入社時点でかなりの技術力を求められるということです。そして求められる技術力のレベルはおそらく皆さんが思っている以上です。東大の理系大学院を出ていても普通に落ちます。
研究や長期のインターンシップで成果を出すなど学生時代から即戦力レベルの人材になるべく努力をした上でこういった会社に入ることで技術力において強みを発揮することができるでしょう。
もしそういったバックグラウンドのない場合はまずビジネス力が身につく会社でデータサイエンティストの入り口を体験し、自己研鑽として技術力を身につけ、転職でこういった本格的に技術をやる会社に行くことを視野に入れましょう。目安としては、3-5年程度でビジネス力と技術力を他の会社で磨いてから、専門系の企業に移るイメージです。ただ別の記事でも解説しましたが、数学力やプログラミング力は実際才能によって上限が決まってくる部分もあるので、自分の得意分野を人生における早いタイミングで見極めるのが大事です。その上で長所を磨きつつ、他の能力も人並みに磨くのが大事です。
データエンジニアリング力が成長する会社
データエンジニアリング力が成長する会社は優秀なエンジニアが在籍するような企業がおすすめです。有名なのはLINEやYahooやDeNAといったところです。また総合コンサルでDX案件を扱っているような実装部隊でもデータエンジニアリング力を身につけることができます。
数学的な力を身につけるよりも比較的多くの環境で身につけることができるのがこのデータエンジニアリング力です。技術系に強いデータサイエンティストになりたいという方はまずこの能力を身につけることを目指して入社先を選定してみるといいかもしれません。
データ分析基盤の構築などいわゆるエンジニアっぽい仕事も多くなります。手を動かす仕事なので多くの人員が必要になるプロジェクトが多く、採用のハードルも数学力を強みとした人よりも低くなりがちなのがこちらです。
迷ったらどうすればいい?
ここまで色々と説明してきましたが結局どの路線にしようかまだ決められないという人も多いと思います。その場合はインターンシップに参加してみて各企業の業務を体験するのが一番早いです。
企業によってデータサイエンスの中でどんな分野をどのようなアプローチでやるのかに大きな差がありますし、社風や現場の空気もかなり違います。データサイエンス分野で新卒就活をする場合は特にここでミスマッチが起きないように前もって環境を体験しておくことがとても大事です。
現時点で特にやりたいこともないという人は、ビジネス力が身につく会社に行ってみるといいと思います。理由はスキルに汎用性があるからです。データサイエンスの深い知識を身につけた後で例えば別の職種に転職しようとする場合今までの業務経験はあまり役に立たないことも多いですが、ビジネス系のデータサイエンティストとして身につけたビジネス思考は他の業務でも役に立つからです。例えばデータサイエンスの分野での活躍を諦めたとしてもPMとして大きな力を発揮して高収入や市場価値を手に入れる方もたくさんいます。また後から特定の技術への興味が強く出てくれば、その分野でのプロジェクトをたくさん経験して技術力を同時に身につけていくことも可能です。
また、ポテンシャル採用で技術力を身につけさせてくれる会社に行くのもお勧めです。技術力を腰を据えて身につけることはとても大変です。大学や大学院で学ぶのが一番いいですが、トータル6年間を就活生の今から費やすことは現実的に不可能です。なので、社会人をやりながらキャッチアップすることになります。そこで使えるのが企業の若手向けの研修や、3年目くらいまでに入るプロジェクトを通しての技術の学習です。人生の中でこのタイミングで技術の入りだけでも学習しないと、このあとで時間を取ったり技術を軸にしてキャリア形成する難易度は上がります。基礎的なプログラミングや基本情報レベルの教養を身につけていないという人は、こういった研修の充実している会社も選択肢に入ります。
数学系のスキルは、正直迷った場合に選ぶスキルとしてはお勧めしません。というのも、汎用性が低いからです。ビジネス系や技術系のスキルは他の職種でも使えますが、数学を使う職業は世の中で少ないです。一定水準以上のディープラーニングのスキルなど、最新の論文にキャッチアップするタイプの業務は、長期のキャリアで見ると無駄になる可能性もあるので、ハイリスクハイリターンなキャリア形成です。無論そちらに興味があったり得意分野であるなら別ですが、迷っているという人はビジネス能力や技術力を身につけましょう。
会社の選び方に関する説明は以下の記事でも行っているので、合わせて読んでみてください。